人に発達段階があるように、家族にも発達段階があります。家族心理学では、新婚期・乳幼児を育てる時期・学童期の子どもを育てる時期・思春期や青年期の子どもを育てる時期・中年期あるいは老年期などに大きく分け、各段階の発達と援助のための研究が進められています。

この記事では、「乳幼児を育てる時期」の家族の発達段階に焦点を当て、その特徴をご紹介していきます。

赤ちゃんを育てる母親の家族心理

初めて経験する子育ての大変さ

終戦前後の拡大家族構成の時代を経て少子化や核家族化が進む中、孤独に子育てをする母親または夫婦が一般化しつつある現代では、体への負担はもちろん、予想以上に手のかかる赤ちゃんを前に、当惑し、感情のコントロールに難しさを覚える母親も多いようです。

実際に、新米ママのの切実な声は、メディアや学術データなどにおいて各所で散見され、福祉領域では、赤ちゃんを養育する世帯に対する支援にも力を入れています。

約20年前の経済企画庁の調査データによると、第一子の乳幼児を持つ専業主婦のうち、子育てをしながら「育児の自信がなくなることがよくある・時々ある」という回答をした母親が70%、「自分のやりたいことができなくてあせることがよくある・時々ある」が74%、なんとなくイライラすることがある・時々ある」が79%と、不安要素を示す内容の回答の割合がいずれも高いことが分かります。

孤独な母親を作り出した社会背景

地域・ご近所で協同して赤ちゃんを育てていた時代に比べ、明らかに減少した子育てネットワークは、母親の心理的な負担を大きなものにする原因の一つです。

その背景には様々ありますが、中でも産業構造の変化に伴って世帯が核家族化することで、親族による子育て支援機能が減少したことは大きな原因の一つです。また、少子化による子育て世代仲間の減少、急速な都市化による子育て世帯の住みにくさ、父親不在によって母親一人にかかる子育ての肉体的・心理的負担なども主要な原因と言えます。

さらに、赤ちゃんを育てながら共働きをする家庭では、仕事のみを担当する男性に対して、仕事と家事・赤ちゃんの世話を担当する女性に大きな負担がかかる一方で、支援的機能やネットワークも乏しく、時間に追われて孤軍奮闘する状態となっている母親が多い現状があります。

物理的に家事や育児の負担を軽減する家電や便利な赤ちゃん用品は年々増え続けていますが、とはいえ赤ちゃんの養育にかかる母親の心理的な負担はそう簡単に解消されるわけではないようです。

母親の情緒と赤ちゃんへの影響

母親の情緒的安定は、乳幼児の発達に大きく影響することについては、あらゆる心理学的研究結果が明らかにされ、重要な事実として強調されてきています。

例えば、1991年、研究者によって関連性を報告された「育児ストレスと検診時の乳幼児の発達検査」として1歳半と3歳児について調べられたデータからは、「イライラが少なく、子どもといると楽しく、心配や疲れの少ない母親の子ども」は、言語や社会性の発達が良好であることが見出されています。

これらは未だ未解明の部分が多い領域ですが、発達心理学の大きなテーマとして1980年代ごろから欧米を中心に研究が活発化しているようです。

赤ちゃんを育てる父親の家族心理

出産による父親の意識の変化

妻の妊娠中および出産後の夫の情緒反応について調べた研究結果によると、妊娠を知った直後は興奮・喜び・共感といった感情が高まるものの、やがて疎外されたような孤立感や無力感を感じ、妻の心身の状態に不安を感じたりするということが分かっています。

さらに、赤ちゃんの誕生後は高揚感を経験しながらも、妻の関心が赤ちゃんに向けられることによって孤立感を持ったり、父親としてどう手助けしていいか戸惑いを感じたりすることもあり、母親のマタニティ・ブルーのような抑うつ状態に陥る父親も少なくないということも報告されています。

赤ちゃんを育てる家族においては、このような父親の心理にも気を配る必要がありそうです。

母親のサポートとしての役割

子育てに対する支援的ネットワークが減少した現代の赤ちゃんを養育する核家族家庭において、肉体的・精神的負担の大きい母親にとって、父親は唯一の心の拠り所といっても過言ではありません。

一家の大黒柱として仕事に大幅な時間を割かざるを得ない日常の中で、母親の育児ストレスについてどれだけ共感し、理解しているかが、母親の心理的負担軽減の重要なポイントになるとされています。

また、妊娠期から妻のサポート的役割に献身し、その後も子育てに積極的に協力した夫とその妻を11年間にわたって追跡調査した研究では、出産後11年目の母親の、父親に対する愛情に大きく影響することが分かっています。

赤ちゃんを養育するという大変な時期の家庭において、父親がどれだけ母親の気持ちに寄り添うことができるかが、その後の絆の深さに繋がると言えます。

父親としての赤ちゃんとの関わり

1990年、立ち合い出産を経験した父親とそうでない父親を1年間追跡調査した研究の報告によると、入浴の手伝いやおむつ交換、散歩や着替えなどの赤ちゃんのお世話について、積極的に参加していたことが明らかにされています。わが子の感動の出産に立ち会った父親は、子どもへの愛情を強く実感すると言われています。

海外で行われた、生後4か月の赤ちゃんと親との関わりを観察した研究では、赤ちゃんのお世話について二次的な役割をする父親は、一次的なお世話をする母親よりも大きな動作を伴う遊びをする傾向があることが分かっています。父親は、母親との関りだけでは得られない感覚を与える能力を備えているのです。

また、父親が主として子どもの一次的なお世話役を担う家庭の父親は、赤ちゃんに対して高いピッチの声で話しかけたり、いろんな表情をして楽しませようとしたり、微笑みかけるといった、一次的なお世話をする母親と同様の関わり方が多くみられたそうです。

これらのことから、父親も母親と同じく、有能な養育者であることが分かります。