一般財団法人・日本家族心理学会は、日本の家族心理学研究と臨床分野における研究の促進や家族心理にかかる心理療法技術の向上、および心理教育の普及に努めることなどを目的として、1984年4月に創設されました。

この記事では、当該学会活動倫理について、制定されている「倫理綱領」に示されている内容を分かりやすく解説しています。

倫理綱領は、〈一般綱領〉と〈倫理基準〉とに大きく分かれています。

Contents

一般綱領

一般社団法人日本家族心理学会会員の倫理綱領では、まず〈一般綱領〉で会員としての基本的な活動姿勢のあり方について以下のように挙げています。

1.基本的人権の尊重

当該会員は、全ての人が持つ基本的人権を尊重するべきであることが最優先に掲げられています。

2.自由意志の尊重

当該会員は、自らの研究や支援活動に関わる全ての対象(家族心理学的支援を必要として求めてきた人とその関係者、調査・研究の協力者、実践と研究に携わる協働専門家など)に対して、相手の自由意志と自己決定を尊重し、福祉と尊厳に最大限の配慮を行うことが求められます。

3.専門職としての自覚と責任

当該会員は、家族心理学支援の実践・研究を行う専門職の立場として、十分な教育や訓練または継続的な研鑽の努力によって専門技能や倫理を習得し、自覚と責任を持って活動することが求められます。

4.社会への影響と発展への貢献

当該会員は、個人・家族・社会の多様性を認識し、自らの活動が社会的・人道的に及ぼす影響の重大さを十分に自覚した上で、社会の健全な発達や発展に貢献するよう努めることが求められます。

倫理基準

第1章 総則

第1条:本倫理基準の制定について

当該学会が〈一般綱領〉に基づいて本倫理基準を定めるものとしています。

第2条:活動業務における“相手”とは

会員の専門的業務上での相手を「臨床実践活動におけるクライエントと家族またはその関係者」、「研究活動における研究協力者」、「教育・研修・スーパーヴィジョン活動における学生・研修生・スーパーヴァイジー」、「協働専門職・コミュニティメンバー」の4種類に分類するとしています。

第3条:相手の尊重と専門職としての責務

ここでは、専門業務にあたり、会員が相手との間に信頼関係の形成に努めることや、相手の自由意志や自己決定を尊重すること、さらに専門業務関係において相手が意思と能力を最大限に発揮することができるような配慮を意識することなどが示されています。また、出版物やマスコミ、講演やネット上での発言の影響力や信頼性と妥当性の維持についての注意が促されています。

第2章 インフォームドコンセント

第4条:業務全般において

専門業務を行う上では、相手の自由意志・自己決定を尊重し、インフォームドコンセントを得ることが共通事項となります。

その際、インフォームドコンセントが必要に応じて随時見直しが可能であることを保障し、インフォームドコンセントが力関係などによって妨げられないよう配慮することや、説明の対象となる相手の状況によってインフォームドコンセントのための説明の理解力が不十分と判断した場合は、保護者などの適切な代諾者を設定してインフォームドコンセントを得ることが求められます。

また、音声・映像記録の利用・保存方法、リスクの可能性などの説明に対するインフォームドコンセントを得ることも必要です。

さらに、これらのインフォームドコンセントを得るにあたっては、必要に応じて書面による同意を得るよことが示されています。

第5条:研究活動において

研究活動では、研究協力者の心理的負担や苦痛について、あるいは研究協力機関の負担についても配慮した上で、研究への協力は自由意志によることを保障する内容の説明をし、インフォームドコンセントを得ることが必要です。また、研究活動によって得た情報がインフォームドコンセントを得た目的と使用方法のみに限定して使用しなければいけません。

第6条:臨床実践活動において

臨床実践活動においては、相手の自己決定を尊重することを前提として、契約内容や守秘義務などについてインフォームドコンセントを得る必要があります。また、複数人が関わる中で、食い違う内容や問題点などが原因で一部の人が受ける可能性のある不利益や危害について適切に見立ててインフォームドコンセントを得ることで最大限の防止に努めなければなりません。

また、メールカウンセリング等を行う際は、インターネット特有のリスクや文書によるコミュニケーションの特徴についての理解とインフォームドコンセントを得ることが必要です。

第3章 機密保持

第7条:専門業務全般において

会員は専門業務にあたり、個人情報や相談内容などの情報と相手のプライバシーを保護・守秘し、具体的な方策を講じることが求められます。研究や実践活動における記録・保管・処理方法の明確化、あるいは電子媒体による流出時のリスク低減のための手段を講じる必要があります。また、これらの守秘は専門的業務を離れてからも持続する責任があります。

第8条:臨床実践活動における守秘の例外

守秘の例外とは、自傷他害の緊急事態や法に抵触する場合のことです。これらの状況下では守秘が例外であることについて、事前にインフォームドコンセントを得ることが必要です。

第9条:家族やシステムと関わる臨床実践活動において

複数人の構成するシステムと関わる際に支援的となる情報の共有については、必要に応じて守秘の範囲の変更を考え、その都度インフォームドコンセントを得るようにします。また、心理療法にあたる複数人の一人一人に特有の配慮を行い、必要に応じて文書による取り決めを行います。

支援にあたる会員が、他コミュニティメンバーなどとの連携が必要であると判断する場合は、支援対象者のインフォームドコンセントを得た上で必要最低限の情報を共有し、それを記録することが求められます。

第4章 多重関係における境界の管理

第10条:危害をもたらす多重関係の回避・禁止

多重関係とは、カウンセラーとクライエントとしての契約関係以外に重複する関係性があることをいいます。多重関係においては、相手に危害をもたらすリスクが高いため、回避すべき禁止事項とされています。

第11条:回避困難な多重関係における境界の管理

多重関係が不可避な場合や、むしろ多重関係が福利をもたらす可能性があると判断した場合は、適切な配慮の手続きを講じることとされています。会員の役割変更といった場合も含め、多重関係を持つことについて相手からのインフォームドコンセントを得ることが必要です。

第5章 専門職としての能力の自覚と研鑽

第12条:資質・技能の向上に努める

会員は、専門職として自覚を持ち、よりよい臨床実践・研究活動のために能力の研鑽に励むことが求められます。また、自分の能力の限界を適切に自覚し、場合によってはスーパーヴァイザーなどに支援を求めることも必要であることが示されています。

第6章 教育・訓練とスーパーヴィジョンにおける責務

第13条:教育・研修・スーパーヴァイジーに対する責務

教育・研修・スーパーヴィジョンを行う際には、相手との信頼関係の形成に努め、力関係の影響などにも配慮した上で、相手の自由意志・自己決定を尊重することが必要となります。また、スーパーヴィジョンを行う会員は、スーパーヴァイジーが本倫理綱領と倫理基準を理解し、クライエントとの関係において遵守するよう援助します。

スーパーヴァイジーの心理療法が必要と判断した場合は、スーパーヴァイザーが実施するのではなく、リファーすることなどについてもインフォームドコンセントを得ることが求められます。

第14条:スーパーヴァイジーのクライエントに対するスーパーヴァイザーの責務

会員は、クライエントの福祉のためにモニターする義務があります。スーパーヴァイジーの限界の判断や緊急事態への対応や勧告などの責務があることを示しています。

第7章 倫理意識の相互啓発および倫理問題への対応

第15条:倫理意識の相互啓発

会員は、本倫理綱領・倫理基準を遵守した上で、専門職として相互啓発に努めることが必要とされています。倫理的に不適当と考えられる活動については自覚を促し合うことが求められています。

第16条:倫理問題への対応

重大な倫理問題が起こっていると考えられる場合、または同様の訴えが寄せられた場合は、理事会において対応が審議されます。

第8章 改廃の手続き

第17条:本倫理綱領の改廃について

本倫理綱領の改廃については、理事で審議し、承認されるものとされています。