家族は、人の発達や人格形成に大きな影響を与える重要な存在です。一見は個人の問題のように思えても、その背景に家族との関係性が影響している事がほとんどです。このような観点から、個人の問題に対し、家族単位で解決へと取り組んでいくのが家族療法です。この記事では、そんな家族療法や家族心理について理解を深めたいという方のために、おすすめの書籍10選をご紹介します。

1.『家族というストレス-家族心理士のすすめ』(著:岡堂哲雄)

 初めにご紹介するのは、国内の様々な家族を援助してきた経験豊かな家族心理士・岡堂哲雄氏による著書です。家族心理の専門書でありながら一般の方にも読みやすく構成されており、家族心理の専門家にとっては、実際の豊富な経験に基づく考察や参考にすべき実践的な技法などを学ぶ事ができる一冊です。

 あたたかさやぬくもりが大事にされていた相互支援的だった大家族時代から、少数化して不安定となった現代家族の違いに目を当て、家族崩壊予防のための家族の健全化を図るためには家族心理療法の普及が必要であると訴えます。

2.『臨床家のための家族療法リソースブック-解説と文献105』(日本家族研究・家族療法心理学会)

 本書では、家族療法の創立を含む歴史や105の基礎文献、代表的な家族療法家の理論と実践の解説を収録した、家族療法臨床家のための書籍です。

 方法論として特にナラティヴ・セラピー、ブリーフセラピー、家族心理教育や家族評価、フェミニズムなどについて取り上げています。臨床現場の報告としては、夫婦療法、児童・思春期、摂食障害・心身症、ひきこもり、学校・教育、高齢者、虐待、アルコール・薬物、犯罪・非行、家事調停、リエゾン・医療現場と家族、災害と家族、移民と家族について紹介されています。

3.『家族療法テキストブック』(日本家族研究・家族療法心理学会)

 本書は、広範囲に渡る臨床領域と様々な背景を持つ家族療法の全体像を把握できるようにまとめられた「理論編」と、医療・教育・福祉・司法などの多角的なアプローチを網羅した「臨床編」とで構成されています。

 事例を交えながらの詳細な記述や用語の解説、コラムと充実した情報量で、家族療法を学ぶための入門書に適したガイドブックです。家族療法が日本で本格的に導入され始めて以降、30年に渡る歴史の中で家族療法家たちが実践した実例を集約した、家族療法の教科書ともいえる書籍です。

4.『マンガでわかる家族療法』(著:東豊 マンガ:武長藍)

 子どもの不登校や非行問題などを、家族の関係変化によって解決する家族療法の事例が、マンガで分かりやすく読める一冊です。家族療法についてマンガ化された書籍はこれが初めてです。

 著者である東教授は、家族療法の第一人者です。本書は、これまでに東教授が書き下ろした家族療法に関する書籍の中から親子を対象にしたものを7本選び、漫画化したものとなっています。家族療法とは一体どんなものなのかという初歩的な地点から、一般の方にも分かりやすく解説が加えられています。

5.『家族連鎖のセラピー』(著:百武正嗣)

 個人だけの問題ではなく、その背後に隠されている家族のあり方と本人のポジションを認識する事を要点とする「ゲシュタルト療法」の観点から、家族間・世代間で連鎖する問題に着目し、解決する方法について解説されています。

6.『システムズアプローチによる家族療法のすすめ方』(共著:吉川悟・東豊)

 日本家族研究・家族療法学会副会長であり、システムアプローチ研究所やコミュニケーション・ケアセンターを主宰する臨床心理士・吉川悟氏と、これまでに挙げた書籍の著者としてご紹介した家族療法の第一人者である、同じく臨床心理士の東豊氏との、システムズアプローチによる家族療法についての共著です。

 家族療法としての治療のあり方や変化の促し方など、家族療法を進める上での重要なポイントを学ぶことができます。実際の逐語録を使って治療者の立場を明らかにし、治療のすすめ方を示します。

7.『家族心理学ー家族システムの発達と臨床的援助』

 社会変動の中で影響を受けながら在り続ける家族システムを理解し、問題が生み出されるメカニズムに迫る一冊です。

 著者はそれぞれの大学生・大学院で教授として教鞭をとる経験豊かな臨床心理士のスペシャリスト、中釜洋子氏・野末武義氏・布柴靖枝氏・無藤清子氏の四人です。カップルカウンセリングや家族療法から見出された臨床的知見から、家族支援に必要な考え方がふんだんに盛り込まれています。

8.『臨床家族心理学―現代社会とコミュニケーション』(著:秋山邦久)

 児童虐待や家族崩壊に見える親子間のコミュニケーション不全を中心に、家族のシステム全体へ働きかけていく心理的援助と問題の解決手段を、臨床家族心理学の立場から説かれた一冊です。

 現代家族の特徴や特有の問題、崩壊家族の誕生から崩壊の過程に始まり、家族関係の理解の仕方や課題の見つけ方と対応、家族支援の姿勢や子どもへの対応や子どもからのサインについても詳細に書かれています。また、発達障害に関する内容や、専門機関との連携方法などの解説もあり、臨床の現場をありありと学ぶ事ができます。

9.『家族臨床心理学ー子どもの問題を家族で解決する』(著:亀口憲治)

 家族臨床心理学の立場から、個人中心ではなく家族全体で取り組む問題解決を支援する方法について、家族療法の第一人者である著者・亀口憲治氏の豊富な臨床経験の事例から学べる一冊です。

 具体的な事例に家庭内暴力・不登校・いじめ・拒食症といった現代の子どもの代表的な問題が取り上げられ、それらに関連する医療・福祉・学校・司法といったネットワークの結節点として、家族臨床心理学の存在を提起しています。

10.『家族病 夫の問題・妻の問題・子の問題』(著:金盛浦子)

 あらゆる現代家族の心の問題に寄り添ってきた第一線の心理カウンセラーによる多数の実例と、その解決方法が収録されるとともに、家族を構成する人員が持つそれぞれの「毒」の存在を提起し、家族の鎖となっていたものを絆に変えるよう示された本です。

 著者は、小学校教諭を経て子どもの心理に着目して以降、教育相談施設や精神神経科などで心理臨床を学んだのち、1978年に東京心理教育研究所を開設、1990年には後にNPO法人として認定される自遊空間SEPYを主宰するなど、カウンセリング臨床の第一線で活躍する人物です。それ故に家族心理の臨床解説に充実した本書は、専門家・一般読者を問わず家族療法を知る事に適した内容となっています。