昨今の日本の家族の形は、時代の変化と共に変容しつつあります。「父は仕事をし、母は家事を行う」というような価値観は少しずつ変化しており、夫婦の役割は各家庭で違いが見られます。

また、近年では日本における精神疾患や難病の認定患者の増加などにより、一般的な家庭とは違う特別な支援を必要としている家庭も多くあります。

その中でも特に注目されている知識が「家族心理教育」です。家族心理教育は主に統合失調症などの精神疾患で悩まれる家族に対し行われるもので、医療機関などが率先して参加を促しています。

ここでは「家族心理教育」について、統合失調症との関りを踏まえて説明していきます。

統合失調症とはどんな病気?

家族心理教育について説明を行う前に、統合失調症についての説明をします。統合失調症とは精神疾患の1つで幻覚や幻聴、妄想といった症状が現れることで有名です。慢性的な幻覚や妄想が多くなると、現実との区別がつかなくなり、周りの人と上手くコミュニケーションが取れないなど、実生活を送ることが非常に困難になることもあります。

10代~20代と主に青年期に発症することが多く、詳しい発症原因については解明されていないことが多いのも事実です。そのため、人々の間には統合失調症に対する誤った知識が多く散見され、統合失調症患者に対しての差別的な意識を持つ人も少なからず存在します。

家族心理とは?

家族心理とは現代社会において、家族が直面する問題に対し子どもや配偶者の問題行動や課題との向き合い方や、離婚やDVと言った夫婦間の問題を解決する際に用いられる心理学で、近年注目が高まっています。

また、このような問題行動だけでなく病気や障害など家族における相互理解を深めることで状況を緩和させ、家族全員が正しい知識を持つことも目標としています。

すなわち、家族間で起こりえるあらゆる問題に対し、心理学的アプローチから相手や自分の正しい理解を深めていくことができます。

家族心理教育と統合失調症

このような家族心理は、しばしば家庭内における問題行動を解決するための心理学という誤解が生じますが、必ずしもそうとは限りません。

特に、家族心理教育の分野においてはエイズや統合失調症といった、正しい知識を有した周りからの適切なサポートが必要な病に対し、家族全員で取り組んでいく方法を教授しています。

そのため、家族心理教育は家族の問題行動の解決を行うための心理的なアプローチだけでなく、病気に対する医学的なサポート方法や病気になった本人以外の家族に対する心のケアなど多岐に渡ります。

従って、カウンセラーや臨床心理士といった心理学に精通した人だけでなく、状況によっては医師などの医療的な知見を必要とする場合も多々あります。

なぜ、家族心理教育が重要なのか

家族心理教育は統合失調症の患者がいる家庭においてしばしば行われます。これは非常に重要であり、家族心理教育が適切に行われるかどうかで病気となっている患者本人だけでなく、家族全体の今後が左右されることもあります。

統合失調症にかかった場合、患者である本人だけでなく、家族においても精神的なケアが必要な場合があります。特に統合失調症は成人期よりも青年期に多く発症する病気の為、その家族は「自分の育て方が悪かったのではないか」と自責の念にかられてしまい、精神を病んでしまう可能性があるからです。

また、統合失調症はその病気の特性上、進行度合いによっては重度のコミュニケーション障害をもたらす可能性があります。

こちらが何もしていないのに急に怒り出したり、怖がったりするなど幻覚や妄想などによって発生した恐怖心や迫害妄想などを発症することがあります。これらに対する適切な知識を家族が持っていない場合、たとえ病気と分かっていても感情的に対応してしまったり、相手を過度に否定してしまったりと患者本人にとっても、家族にとっても良くない行動を選択してしまうこともあります。

そのため、患者本人だけでなくその家族も医療機関と協力をして病気に対する正しい知識や対応方法を知ることが重要です。

このように家族に対しても心理的教育を受けてもらうことで、家族と医療機関が協力し合って病気の回復を目指していくことができます。

家族心理教育の流れ

家族心理教育とは言っても具体的にどのような方法が取られるのかは医療機関によって違いがあります。そのため、ここでは一般的なモデルを基に説明をします。

基本的には月に1回2時間の講義を半年間受けていく形になります。

統合失調症への理解を深める

医師による統合失調症に関する正しい知識を説明します。統合失調症はよく「かかったら治らない」「全く会話が通じなくなってしまう」といった誤った知識が広まっています。この誤情報から、不安に思う家族が多く、自分の家族が統合失調症である宣告を受けた際に取り乱してしまう人も少なくありません。

そのため、医師による講義を基に統合失調症に関する正しい知識を身に着けます。

病気のプロセスを知る

統合失調症を発症した家族の中には「自分があの子に無理をさせすぎてしまった」と自分自身を責めすぎてしまう人がいます。

統合失調症は環境の変化などのストレスによって誰でもなる可能性がある病気です。たしかに一部遺伝的な要因があるという研究結果もありますが、発症までには環境要因や本人の特性など様々な状況が複雑に絡み合います。

そのような正確なプロセスを理解することで、家族が必要以上に自分を責めないよう知識を教授します。

急性期と薬物療法について

統合失調症はいきなり症状が悪化する急性期と呼ばれる時期が存在します。その際の適切な処置を薬物療法での治療と共に教授します。これにより、急激な状態の変化にも対応できるための知識を培います。

薬物療法の副作用について

精神薬の薬はしばしば、「飲むと依存状態になる」といった誤解が生じやすい薬です。確かにそのような側面もありますが、適切な処置を行うことで未然に防ぐことも可能になります。そのため、薬の効果や副作用についての正しい知識を身に着けます。

障害への対処について

統合失調症を発症すると妄言や独り言などの症状が出ることがあります。医療的な知識が乏しい場合、それらの症状に対しての適切な処置ができなく悩んでしまうことも多いです。そのため、医師や看護師が講師となり、統合失調症に対する正しい対処法を学びます。

利用できる社会資源について

統合失調症に関しては様々な行政サービスを受けることが可能です。また、状態によっては精神障害者手帳など手続きが必要になる場合が多くあります。

このような場合に何をどうすればいいかわからないといった家族のために、精神保健福祉士が利用できる行政サービスなどを紹介してくれます。

まとめ

  • 家族心理教育は統合失調症などの病気に対する家族の理解を促すものである
  • 統合失調症は家族の理解が不可欠なので家族心理教育の利用が重要
  • 医師や看護師、精神保健福祉士と協力して家族でサポートしていく