家族心理教育という言葉を聞いたことがあるものの、具体的に何をするのかわからないという人は多いです。家族、心理、教育という言葉があるので、家族に心理学的な教育を施すのかという予想くらいはできますが、イメージがあまりわきません。

この記事では、家族心理教育について解説していきます。家族心理学に興味がある人はもちろんのこと、家族カウンセリングを受けようか迷っている人も参考にしてみてください。

家族心理教育とは

家族心理教育とは、うつ病や統合失調症、エイズ、ひきこもりといった様々な困難を抱える人たちに、正しい知識や関わり方のコツなどを伝え、自分たちで療養生活を送ることができるように手助けする方法のことを指します。本人だけではなく、家族も含めて病気への知識や引き起こされる問題とそれに対する対処法について伝え、身に着けてもらいます。

教育という名前になっていますが、カウンセラーが物を教えるというよりも、正しい知識を提供して生活のヒントにしてもらうというイメージで構いません。家族が何を体験しているのかということに着目し、病気の知識に加えて、対人コミュニケーションのヒントを体験学習で学んでもらいます。様々専門的アプローチを取り入れながら、問題解決と再発予防に努めます。家族心理教育は、専門家が家族を支援する方法の内の一つなのです。

家族心理教育を行うことによって困難を抱えている本人はもちろんのこと、家族も気持ちが楽になって生活しやすくなるというメリットがあります。本人と家族が困難から目を背けず、積極的に動けるようになることは、問題解決のためには必要なことです。家族も、自分たちが正しい知識を得て対処できるとわかれば、大きな自信になります。自信がつけば、余裕を持って自己選択できるようになります。家族心理教育は、正しい知識を本人と家族に身に着けてもらうことで、家族全体に困難に立ち向かう力をつける役割があるのです。

家族心理教育が必要な理由

家族心理教育にメリットがあるのはわかるものの、わざわざ家族心理教育をしなくてもいいのではないかと思う人もいるでしょう。確かに家族心理教育をしなくても問題が解決するケースもあります。しかし一方で、家族心理教育をしないことで本人だけではなく家族全体が苦しんでしまうというケースもあります。

家族が病気に対する理解がないために、本人が必要以上に苦しむことは珍しくありません。なかなか相談もできず、途方に暮れている人も多いです。また、本人だけではなく、家族もどうしていいかわからず、行き詰っていることはよくあります。自尊心が低下し、怒りもわいてくるでしょう。家族関係も悪化して精神的にも体力的にも追い込まれているというケースさえあります。

このようなケースには、家族心理教育が有効です。病気に対する理解が深まれば、不用意に怒り、苦しむことがなくなります。家族に困難を抱えている人は、自分の教育が悪いのかとか、自分が駄目な人間だから家族に問題が起きるんだなどと思いこむことが多いです。そのような思い込みを解消し、現実に目を向けてもらう意味でも、家族心理教育は必要なのです。

家族が自信を持って接することができるようになれば、本人はかなり過ごしやすくなります。家族の仲でいい流れが生まれて、本人にもいい影響が出ます。家族心理教育がない状態では苦しんでいて悪循環になっていたものが、知識を得て自分たちで動けるようになることで、好循環を生み出せるようになるのです。

このように、家族心理教育は困難を抱えていて苦しんでいる家族の悪い流れを断ち切り、家族が前向きになっていい流れを生み出すきっかけづくりになります。カウンセリングをしていない間でも自分たちで動けるようになるので、自立を促す効果もあります。家族心理教育は科学的に効果がある方法だと言われています。現状に行き詰まりを感じる場合は、家族心理教育のプログラムを利用することをおすすめします。

家族心理教育の一例は

家族心理教育が有効なことはわかりましたが、具体的にはどのように行うものなのでしょうか。ここでは、家族心理教育の一例について解説していきます。

家族心理教育の一例として挙げられるのが、家族教室です。家族教室とは、家族グループ活動のようなもので、数回のセッションを通して学んでいきます。大体2、3時間前後で行います。人数は10人前後と、あまり多くならないようにするのが多いです。家族教室は、病気に関する理解を深める時間と、グループで自由に話し合って自分の気持ちや他の人の気持ちに気づく交流を行う特徴があります。具体的には、グループ内で困っていることを挙げて、それについてみんなで話し合うということをやります。各々がアイデアを出し合い、最終的に相談者が自分で対処法を選択するというやり取りをします。

グループで話し合うことで様々なアイデアに触れることができますし、自分の気持ちを吐き出すこともできます。また、苦しんでいるのは自分たちだけではないことがわかるので、精神的な支えにもなるでしょう。どうして苦しんでいるのか、悪いのは誰かという発想ではなく、いま何をしてうまくいっているのか、今後どうすれば解決するのかというように、未来に目を向けて話をします。

病気に関する理解を深める時間も、よくある講義のように一方的にはならず、家族がやってきたことを話しながら、双方向性を持って学ぶという特徴があります。こうすることで、家族が病気の知識をスムーズに理解し、かつ自責感を減らすことができます。病気に関する理解を深める時間も、自由に話し合う時間も必要なことなのです。

家族心理教育で総合的な援助を

家族心理教育は、病気に苦しんでいる本人と家族が病気に対する正しい知識を身に着け、自分たちで前向きに行動できるように促す援助方法のことです。家族の理解が得られず苦しんでいる本人や、家族全体でつらい思いをしている家族に有効な方法であると言えるでしょう。家族心理教育の考え方は家族カウンセリングにも必要なことです。家族に情報提供を行いながらともに困難を見つめることで、共同作業で問題解決に取り組めるようになります。