結婚して家族になると、妊娠・出産や子どもの養育などを経て老年期に至るまで、家族は心理的に段階を踏んで発達していきます。各段階の移行期は「家族メンバーの出入り」がポイントとなっており、家族システム全体が不安定になる時期とも言われています。

家族の形が多様化している現代ではありますが、この記事では、特に一般的な家族心理の発達段階とその発達課題について、5段階に分けて簡単にご紹介します。

新婚期の家族心理

新婚期の発達課題

米国の家族療法家マクゴールドリックらは、新婚期の夫婦の発達課題として、「夫婦というシステムを形成すること」と「新しいパートナーを包含するように、拡大家族・友人・大きなコミュニティや社会システムとの関係を再編成すること」の二つを挙げています。

夫婦二人だけの関係性だけでなく、互いの育った家族や環境も共有することは、より良い家族を気づくために欠かせないことです。

子どもを持つことについて話し合う

同じくマクゴードリックらは、夫婦で子どもを持つことについて話し合うことの重要性も取り上げています。

現代の夫婦においては、晩婚化傾向、働く女性の増加、不妊治療の問題など、時代の変化に対応しながら、自分たちのライフスタイルや価値観などと合わせて、子どもを持つことについて話し合いをすることが重要であるといいます。

今後の人生設計を話し合うことによって夫婦の絆を深めることができ、子どもを迎え入れる段階に備えて準備をしておくこともできます。

結婚前にしておきたいこと

新婚期には、夫婦に困難や影響を及ぼす様々な要因があります。現在、欧米をはじめとする世界各国では、夫婦がそれらの課題に適応しながら良好な関係を保っていくために必要な準備の一つとして、結婚前カウンセリングや心理教育的プログラムの実践が広がりを見せています。

しかし、日本国内においては、それらの認知度は低く、結婚前のカップルが話し合う事柄は最低限のことで、家事の分担や、夫の仕事中心かどうかといった生活スタイルなどの重要な生活方針については話し合うことなく結婚に至ることが多いといわれています。

離婚の予防はもちろん、夫婦が円満な結婚生活を送り、幸せにあふれた子育てを可能にするためにも、婚前の準備が必要です。こと離婚率の高さが問題となっている現代の日本においては、取り入れられるべき課題といえます。

乳幼児を育てる時期の家族心理

乳幼児を育てる時期の発達課題

乳幼児を育てる時期の夫婦の発達課題としては、乳幼児の誕生による「親役割への対応」、そのための環境調整といった「養育のためのシステムづくり」、あるいは「実家との新しい関係の確立」などが挙げられます。

これらの課題は、里親・養子縁組や再婚による、親と血の繋がりがない乳幼児の迎え入れや養育についても同じことがいえます。

乳幼児期の発達と愛着の形成

親は、言語能力が備わっていない、または未発達な乳幼児に対して、その子の情動を理解し、欲求を満たしてやろうと働きかけます。親子はこうしてやりとりを積み重ね、愛着を形成していきます。

不安定な夫婦関係にストレスを感じている親は、子どもに対する本来の応答性や養護性を発揮し難いといわれています。愛着形成が上手くいかない場合、その後の親子関係に影響することは言うまでもありません。

ワーク・ライフ・バランス

この時期の発達課題や乳幼児期の愛着形成などをふまえて、新婚期に引き続き、夫婦間の絆は非常に重要といえます。より良好な夫婦関係を維持するためには、環境の変化によるストレスに対応し、適応していく必要があります。

そのためには、仕事と家庭の両立を意味する“ワーク・ライフ・バランス”を軽視せず、状況によって夫婦で話し合うことが重要となります。

学童期の子どもを育てる時期の家族心理

学童期の子どもを育てる時期の発達課題

学童期とは、一般的に6歳から12歳までの小学生の期間のことをいいます。エリクソンは、この時期の社会心理的発達課題として「勤勉性・劣等感」を経験する時期と捉えています。

勉強や運動または遊びといった中で、努力して良い成果を出すこともあれば、努力しても人にかなわないことがあることを経験し、自分の長所や能力に気づいていきます。また、課題に失敗すると、自信を失ってしまうこともあります。

親はそんな子どもに成長に喜んだり、心配したりしながら必要に応じたサポートをすることが求められます。また、引き続きワーク・ライフ・バランスのための協働や、祖父母や地域・学校などのコミュニティとの関わりが求められます。

思春期・青年期の子どもを育てる時期の家族心理

思春期・青年期の子どもを育てる時期の発達課題

子どもは自立やアイデンティティの形成に向けて高度な発達課題に直面する時期を迎え、情緒的に不安定になりやすい時期です。

一方、親は中年期に移行する中で、中年期のアイデンティティの再編が求められます。上の世代の介護や死についての問題、子どもの自立など、孤独感や喪失感に直面する不安定な時期です。

このように、この時期の家族心理はそれぞれに大きな負担が掛かりやすく、家族全体が不安定になりやすい時期といえます。それぞれに与えられた変化や複雑な課題に対し、時間をかけながらも向き合っていくことが求められます。

中年期・老年期の家族心理

中年期の発達課題

子どもの成人期への移行に伴って、親は子どもの巣立ちに向けた支援が求められるようになります。

欧米の研究報告によると、この時の夫婦関係は、子どもの巣立ちによって「夫婦仲が悪くなりやすい」とも、「結婚生活への満足感が高まる」ともいわれています。いずれにしても夫婦関係に新たな変化を与える時期であることに変わりはないようです。

老年期の発達課題

2015年の厚生労働省のデータによると、日本国内の高齢者介護の大半が在宅で行われており、介護する役割は“妻”や“嫁”に大きく依存しているといいます。さらに、介護者の3分の2以上が老老介護です。被介護者は親に限らず、配偶者であることもあります。

介護によって離職や転職を余儀なくされ、肉体的・精神的な負担が加わり、時間的拘束を受けるなど、大きな環境の変化による子への荷重は計り知れません。

また、過度のストレスが原因で充分な介護ができないまま被介護者と死別した場合、後悔の念や罪悪感などから、その後の適応に影響が出てしまうことが指摘されています。介護環境の質については、今後も国家レベルの問題として見直しや対応が必要となりそうです。