近年の日本では昔とは違い家族の在り方も変化しています。基本的に親子三世代が同居する形をとっていた時代とは違い、核家族化が進みそれに伴って家族内におけるそれぞれの役割にも違いが見られます。

また、それだけでなく統合失調症やエイズといった周りからのサポートが必要となる病気への理解が深まり、より家族からの支援が重要であるという考え方が一般的になりつつあります。

このような現状の中で、注目を集めているのが「家族心理」という学問です。ここでは家族心理と、その基本的な理論を家族療法に合わせて説明します。

家族心理とは

家族心理とは家族関係に焦点をあてた心理学の一種です。1990年頃に大家族から核家族への時代の変化に伴って発展してきました。

主に不登校や非行などの青年期に見られる問題行動の改善や離婚などによる子どもの監護など、家庭内における子どもの心理に着目したものや、夫婦間問題など夫婦としてあるいは子どもとしての家族における役割などを追及していきます。

また、精神疾患や難病など家族の支援を必要とする病気において家族全体で相互理解し、解決を図っていくための家族療法なども注目されています。

家族心理や家族療法の基本的な理論

家族心理においては、主に家族をシステムとして捉えるシステム理論が用いられています。家族を一つのシステムとし、その中で夫や妻、父親や母親。子どもといったサブシステムを持つとしています。

また、家族療法の中では家族というシステムの中で自己を確立を目指す多世代理論を始め、構造派理論、コミュニケーション理論など様々な療法が実践されています。

それぞれの特徴を理解し、適切な処置を施すことが重要です。以下に詳しく解説します。

家族療法におけるシステムアプローチ

家族療法での家族心理において、家族を1つのシステムとしてみなし、そのシステムの中にある親や子どもをサブシステムとして位置付けていく考え方が一般的です。

精神医学の現場ではよく、精神疾患を患った患者にのみ焦点を当てていきますが、家族療法ではそれを家族全体の問題として捉えます。家族としてのシステムの中で一番感受性が強い人が精神疾患にかかる確率が高く、精神疾患にかかる理由も本人だけの問題でなく、家族というシステム全体に何かしらの不具合があることが多いです。

例えば、1つの家族の中で子どもが精神疾患となった場合、父子や母子としての関係性、夫婦間の関係性、兄弟がいる場合は兄弟間の関係性など、サブシステム同士のつながりが健全であったかという広い視点を持ち、解決に当たることが重要になります。

家族という1つの集団を広い視野に立って改善していくことで、患者の回復や再発の防止に役立ちます。

家族療法における多世代理論

多世代理論とは親と子の関係性は多世代に渡って継承されていくという考え方です。その中で重要になるのが「分化と融合」という考え方です。分化と融合とは、親と子どもの関係性の中で、その感情がしっかりと自立しているかの程度を指します。たとえば、自分の感情や判断を家族という集団の中で「親の考え」を基準に考える場合は、感情的な自立が十分とは言えません。

このような考え方を用いる人は、過去に親からの多大な期待に応えようと頑張っていたり、親の愚痴の聞き役となっていたりと子供時代に親の依存心などを解消しパートナーとして支える役割をしてきた人に多く見られます。また、これらの親から子へと行われてきた習慣はさらに次の世代へと引き継がれていくことになるため、その次の親子間においても同様の問題を引き起こす可能性が高くなります。

多世代理論における家族療法ではこれらの家族の関係図(ジェノグラム)を作成していくことにより、その家族そのものの不具合を解消することを目指します。

近年、よく耳にする「アダルトチルドレン」などは、親が子どもとの境界線を飛び越えた結果、自己の確立に失敗し、家族と自らを分化することが出来ない状態に陥っていると言われています。

家族療法における構造派理論

家族を1つの構造と捉え、その境界と勢力のバランスを保つことを「構造派理論」といいます。

たとえば、子どもは子ども、親は親として独立し、そのバランス感覚が優れていることが望ましい家族です。しかし、何かしら問題を抱えている家族は、親が子どもに過干渉だったり依存的だったりと、子どもを独立した個人と見なすことが出来ず、その境界線を飛び越えてしまっていることが多いです。

そのため、家族という構造の中で、どの立場の人間がどのような勢力を持っているかを確かめ、健全な家族関係の修復にあたることが大切になります。

家族療法におけるコミュニケーション理論

コミュニケーション理論は今までの理論とは違い、その行動の在り方にのみ注目をした理論です。多世代理論も構造派理論も家族という枠組みのなかでのそれぞれの相互作用に着目しています。

しかし、コミュニケーション理論ではこのような家族システムを否定的に捉え、「今そこにある問題行動」にのみ焦点を当てています。ある家族内の問題に対して、問題の本質を見るという事よりも、その問題を辞めさせることの方が重要であるとの考えです。

そのため、問題行動がある家族内においては、家族の構成員それぞれに問題だと思われる行動を辞めさせます。それ以上は特になにもせず、問題である行動がなくなることによって家族間の問題は解消されていくという立場を持ちます。

まとめ

  • 精神疾患患者のいる家庭に対し、患者だけでなく家族を含めた治療を施すのが家族療法である
  • 家族心理や家族療法における家族とは一つのシステムであり、このシステム内のサブシステムとして親や子が存在する
  • 多世代理論では、子どもの育て方や子供への親の依存心は世代に継承されていくという立場を取る
  • 構造派理論では家族の境界線と勢力に着目し、それぞれのサブシステムが個として尊重された上で、相互に作用することを理想としている
  • コミュニケーション理論においては、問題の本質よりもその問題行動そのものに注目を行い、それを辞めさせた上で家族間のコミュニケーションを適切な形に戻すことに注力する