家族心理は、人間の家族や組織のメンバー間だけのものではありません。ペットとしての動物も家族心理に影響を与え、ペットの終末期ケアも家族心理なくしては語れません。一方犬や猫を始めとした動物を介して行われるアニマルセラピーが注目されています。活用事例や関連書籍、実際に活用されている現場をご紹介します。

家族心理と動物にかかわる心理療法

家族心理と動物が関わる心理療法は、人間に動物がかかわるものと、動物の心理に人間が関わるものの2つに大別されます。それぞれどのように発展を重ねてきたかを通じて、家族心理と動物にかかわる心理療法や研究、関連書籍の数々をご紹介します。また、活用例として実際にこれらを活用している施設についても触れます。

発展の経緯

1970年代に動物心理学によって、動物の行動原理が解明されるようになり、その一方で対人間向けのグリーフケアやターミナルケアの研究が進みました。これは家族を看取ることを考え、実践する中で現在必要不可欠なケアとされています。これらのケアを始めとして、動物を介在させて展開する心理療法が動物介在療法です。家族心理と密接な関係を持っています。また、ペットが受けるグリーフケアの取り組みも現在進んでいます。

家族心理と動物に関連した心理療法

対人間への心理療法の一環で行われる動物介在療法は、高齢者や何らかの疾患を持つ患者に一定の効果があると見られています。イライラや不安、ストレスが軽減して、気持ちの落ち着きや快活さが増大するのです。この取り組みは人間と動物が適切な距離とコミュニケーションを取ることで成立しており、ここにも家族心理が活かされています。なお、動物が終末期ケアと言われるグリーフケアを受ける場合にも、同様の効果が見られます。

家族心理と動物に関連した研究

動物介在療法の礎になっている研究は、動物心理学の側面から検証されている一方で、「ペットと癒し」という側面からの研究も多くあります。いずれにしても動物が受身的な立場ではなく、人間と共生するという観点が特徴です。これらの研究も、人間の家族心理が大切な要素になります。ペット対家族、家族のメンバー対ペットという位置関係の捉え方が必要になるからです。そのことからペットロスに言及する論文もあります。

家族心理と動物にかかわる書籍

家族心理と動物のかかわりについて更に知りたいとき、関連書籍で知識を深めてもよいでしょう。アニマルセラピーを始めとして、家族とペットの心理に言及したものや動物との対話を薦める本など、家族心理と動物について、いろいろな観点から綴られています。比較的やさしい本からトライしてみるのもいいでしょう。

アニマル・セラピーとは何か(NHKブックス)

アニマル・セラピーに3年間携わった精神科医が、日本にアニマル・セラピーを広めるために綴った一冊です。著者は欧米での研究キャリアもあり、実務経験もベースにしつつアニマル・セラピーをといています。アニマル・セラピーの概要や可能性を知るのに最適です。

「アニマルセラピーの活動を始めようとする方に、いい入門書だと思います」

「科学的根拠に基づいた内容ながら、文章が平易で読みやすいです。人と動物の関係から現代社会も読み取れます」

犬と家族の心理学ードッグ・セラピー入門

犬との適度な距離とコミュニケーションの取り方をわかりやすく解説しています。犬をペットとして家族に迎え入れ、そして家族になっていくまでのプロセスと注意点も的確で、家族心理と動物のかかわりを考えるにあたって示唆に富む一冊です。

「ペットを飼っている人や飼おうとしている人はもちろんですが、家族を持つ方や子供がいる方にも読んでもらいたい」

「テーマがすばらしいと思います。互いに生命体としての品格を認め合いたいものです」

ローレン・マッコールの動物たちと話そう

独自のテクニックでアニマル・コミュニケーションを身につけたローレン・マッコール氏による著書です。イメージングや呼吸法、神経言語プログラムを駆使したコミニュケーション法を紹介しています。YouTubeでその概要を観ることもできます。

「読んですぐに動物の心を理解できるわけではないですが、人間よりも前向きな動物の在り方を知ることができました」

「著者の興味深いエピソードも相まって、初めての人にもわかりやすく書かれていました」

家族心理と動物にかかわる施設

あらゆる角度から家族心理と動物にかかわっている施設は年々増えています。対人間へ動物介在療法を実践する病院や施設はもとより、動物病院ではペットのこころに寄り添った治療や、人間のようにグリーフケアと呼ばれる終末期ケアを実践する病院もあります。家族心理と動物にかかわる施設の一例をご紹介します。

帝京科学大学附属動物病院

犬、猫、爬虫類・両生類を除くエキゾチックアニマルを対象にした動物病院です。一般診療、リハビリテーションの他、ペットと飼い主が仲よく幸せに暮らすためのウェルネスケアの取り組みとして、飼い方やペットの問題行動についての相談や健康管理の受付、各種セミナーが行われています。また、ペットロスに起因する飼い主の心のケアに臨床心理士が取り組んでおり、ペットを含む家族心理へも総合的に寄り添った動物病院と言えるでしょう。

北里大学メディカルセンター

北里大学メディカルセンターでは動物介在療法の継続的な実践を目指しています。長期的な入院を余儀なくされている小児科にかかる子供たちへのメンタルケアとして、その可能性を拓き続けているのです。ここにも家族心理が大きく関連しています。小児科・精神科医を始め獣医学部、看護部、医療衛生学部研究員から学部横断でメンバーを集めてプロジェクトチームがつくられ、動物介在療法の実施やセラピー・ドッグの育成に努めています。

Animal-funfair わんとほーむ

介護職員として勤務する中で高齢者への動物介在介護の必要性に気づき、現在は独立して活動を続けている向宇希さんによる個人事業です。自身が幼少期に過ごした入院生活からの想いが現在、動物介在介護の普及活動につながっています。多くの研究や実践発表、講演を行っており、また子供たちへの動物介在教育にも活動が拡大中です。また、認定資格である「動物介在認知症介護士」の通信教育を実施、啓蒙活動も盛んに行っています。

まとめ

家族心理と動物が密接につながっていることがよくわかったのではないでしょうか。人が動物から癒しを得ることのみならず、動物も癒しを必要としているのは新たな発見だったかも知れません。いずれにしろペットが家族の一員であることが前提であり、家族心理の理解がペットへの理解につながると言って過言ではないでしょう。