日本における家族事情は、時代の変化と共に様変わりしつつあります。夫婦の役割は子どもとの関わり方は時代と共に変容し、過去の日本と現在の日本を比べるとその違いが大きいことが分かります。

家族心理では、そのような家族の在り方を心理学的観点から深めていく学問です。親子関係のみならず、夫婦間の問題や、兄弟としての在り方など多岐に渡ります。その中で、家族という一つの集団が時間的な経過を経るにつれて変化していくというのも特徴としてあります。

ここでは家族という一つの集団が、時間経過とともにどのような変化を辿るのか説明していきます。

家族心理における家族システムについて

家族心理において、家族とはしばしば「システム」として捉えられることがあります。家族という集団の中には親と子がいるだけでなく、親の中には母親と父親、子どもの中においても兄や姉、弟や妹など、それぞれの存在に対して一定の役割を持っていると考えられます。

家族心理ではそれらを一つのシステムと捉え、時間の経過とともに変化していくものと位置付けられているのが一般的です。

この家族システムは主に家族という一つのシステムの中に、親や兄弟といったサブシステムが存在していると捉えます。そのため、家族システムは複数の個人がサブシステムとして相互に結びついている集団と考え、これらの勢力配分と階層の諸段階が時間経過とともに変容していきます。

具体的にどのように家族システムが変化していくのかを説明します。

新婚の時における家族心理の変化について

まず、最初の家族システムとして新婚時の家族心理が上げられます。この時期においての家族心理として一番重要なことは「お互いの親から自立して新しい家庭環境を構築すること」です。

つまり、新しい共同体として親元から心理的に独立し、夫婦が自立し合う関係が求められます。お互いがお互いを尊重し、自立した上で、一体感を持つという事が今後の夫婦生活においても非常に大切になるのです。

しかし、これらの時期に、どちらか片方が親からの依存が抜け切れていなかったり、逆に親が子離れできていなかったりすると生活の優先度が旦那や妻でなく、親となってしまい、夫婦間で必要となる適切な協力関係を築くことができません。

そのため、夫婦間における役割分担や相互に尊敬し合う気持ちなどが醸成されにくく、後の家族関係において危機をもたらす可能性が高くなります。

子どもが誕生した際の家族心理の変化について

子どもが誕生すると家族システムは大きく変化します。今まで家族システムにけるサブシステムは夫婦間というもののみだったのに対し、その中に新たに子どもというサブシステムが組み込まれていきます。もちろんそれに伴い、母子としての関係性や父子としての関係性なども新たに生まれるため、夫婦におけるサブシステムの構築にまだ順応しきれていない若い夫婦などは当然苦労することになります。

この時に重要になることは、全体的なバランスを守ることです。どちらか片方のみ子どもとの関係性と強く持ち合わせすぎて、夫婦間のシステムにおけるバランスを無視することは今後の夫婦関係や家族関係に危機をもたらす可能性が十分考えられます。

また、これらの夫婦関係のシステム不良は子どもとの関係性にも大きく影響すると言われており、母親が子どもの前で父親の悪口などを頻繁に言う場合、母親と子どもの間には愛情的な癒着が形成されにくいという研究結果もあります。

基本的に子どもは母親と多くの時間を過ごすことになるため、母親と子ども間の絆は強くなる傾向にあります。しかし、その際に子どもの耳に母親が愛すべき父親の悪口を言っていることを聞いてしまうと、潜在意識の中で「自分もいつか母親に嫌われてしまうかも知れない」という気持ちが芽生えてしまいます。そうなると、子どもは愛情のかけ方を学ぶ方法を知らず、恐怖心から相手を束縛するような人格を形成する危険性も持っています。そのため、適切な夫婦関係を構築することが家族心理において重要であることがいえます。

しかし、現代の日本においては経済的な状況や女性の社会進出などで女性が母親や妻としての役割のみを行う事が難しくなっています。このような状況において、一番大切な役割を担っているのは男性です。男性が積極的に家事や育児に参画することで、母親がしっかりと母親として機能できる時間や妻として機能できる時間や心理的余裕を作ってあげることが重要になります。

そのため、昔の日本における父親の家族システムとしての役割とは少し違い、現在は母親や妻の時間的または心理的余裕を作ってあげることが必要です。このように男性が積極的に現代の家族システムに合わせた変化を行うことで、女性の母親としての役割や妻としての役割を遂行できる状況を整える必要性があります。

子どもの成長に合わせた家族心理の変化について

子どもが成長期に差し掛かった頃が家族として一番の変化が訪れるころです。この時期の夫婦間はお互いに「子どもの成長と養育」という共通の目的があることから比較的安定していることが多いです。

この頃に一番変化が訪れるのは子どもの家族システムにおける役割です。今まで依存的に過ごしてきた幼少期とは違い、子どもは新たに「自分自身とは何者か」「どのように生きていくことが必要なのか」というのを自問自答し、自立していきます。その中における親の役割は、自らの弱さを認めつつ自分自身の存在をしっかりと子どもに見せつけ、子どもを開放することです。

一般的に子どもの親離れよりも親の子離れの方が遅いと言われていますが、あまりにも子どもに過干渉な態度を取り続けると子どもは親からの自立を行うため暴力的な態度で関係性を壊そうとすることもあります。

そのため、親は子どもの自立を陰ながら支え、危険からの回避が行える安全な場所を確保してあげるくらいに留めておく必要性があります。また、この時期に親自身も子どもからの依存から離れ、新たに夫婦関係を築くよう努めることが大事です。

今までは子どもの成長と養育で一致団結していた夫婦も、子どもの自立に伴って新しい共通目標や関係性を持っていくことが重要です。逆にこれが適切に行えず、次のステップに向けての適切な夫婦関係の構築に失敗すると片方の親がもう片方の親を否定する構造が出来上がることがあります。

子どもが自立した後の家族心理の変化について

子どもが巣立った家族関係を「空の巣」と表現することがありますが、これに対して夫婦間でどのような意味づけを行うかが非常に大切になります。これを一つの役割の完遂や解放と捉え、また新たな夫婦間の形成を模索していくことが良いとされています。

逆にこの子どもの巣立ちを喪失と捉えてしまうと、その後の適切な夫婦関係を構築することができず、子どもがいないことで家族システムが壊れてしまうこともあります。

これを防ぐためにもっともの重要なことは夫婦による共同作業や共通目標を持つことです。お互いがお互いのために何ができるのかを適切に考え、子どものいない家族システムをポジティブに捉えることが大切です。

まとめ

  • 家族心理では家族を一つのシステムと捉える
  • 家族システムにおけるそれぞれの役割は時間と共に変化していく
  • 子どもへの心理的依存だけではなく、夫として妻として夫婦間のシステムをどう構築するかが大切である